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2021年にアニメ『ルパン三世』がテレビシリーズ開始50周年という大きな節目を迎えました。
その半世紀にわたる輝かしい歴史は、常に革新的でスタイリッシュな音楽と共にありました。
音楽は単なる背景ではなく、時にはルパンというキャラクターそのものよりも雄弁に、各シリーズの魂を物語ってきました。
今回は、トムス・エンタテインメントの公式YouTubeチャンネルが公開した「全オープニング&エンディング大公開」という貴重な動画をガイドに、PART1からPART6までの音楽の壮大な変遷を辿ります。
なぜルパンの音楽は、時代を超えて私たちの心を掴んで離さないのか?
「ルパンミュージック」と称されるその魅力の秘密に、深く迫っていきましょう。
【ルパン三世】全オープニング&エンディング&アイキャッチ大公開!【TVアニメ化50周年】│"LUPIN THE 3RD" FULL OPENING & ENDING & EYECATCH
1. 伝説の始まり『ルパン三世 PART1』(1971年)
記念すべきTVシリーズ第1作、通称「旧ルパン」は、その後のシリーズが持つ明るいイメージとは一線を画す、極めて大人びたハードボイルドな作風で幕を開けました。その独特な世界観の扉を開いたのが、作曲家・山下毅雄さんの手による音楽と、シンガーソングライター、チャーリー・コーセイさんの気だるく乾いた歌声でした。
オープニング曲「ルパン三世その1」は、これから始まる危険なゲームを予感させる、緊張感あふれるジャズナンバー。
そしてエンディング曲「ルパン三世その2」は、仕事の後の虚無感や孤独を滲ませる、哀愁に満ちたメロディ。
これら2曲は、まさにモンキー・パンチさんの原作漫画が持つニヒルで危険な魅力を完璧に音で表現していました。
チャーリー・コーセイさんの少ししゃがれた、感情を抑えたかのような歌声は、まさしく初期のルパン三世そのものであり、この作品が単なる子供向けアニメではないことを視聴者に強く印象付けたのです。
山下毅雄さんが作り上げたサウンドは、当時のアニメ音楽の常識を打ち破り、映像作品に深みを与えるための、極めて洗練された劇伴音楽の先駆けとなりました。
2. 国民的人気へ『ルパン三世 PART2』(1977年)
『ルパン三世』の人気を国民的なものへと押し上げた『PART2』。
その成功の最大の功労者こそ、このシリーズから音楽を担当することになった作曲家・大野雄二さんです。
彼が生み出したオープニング「ルパン三世のテーマ」は、それまでのアニメソングの常識を根底から覆す、ジャズやファンク、ロックが高度に融合した「フュージョン」という、当時最も先鋭的だった音楽ジャンルを大胆に取り入れたものでした。
「'78」「'79」「'80」と年々アレンジを変えていくインストゥルメンタル版は、そのスリリングなメロディと圧倒的な演奏技術で日本中を熱狂させ、アニメ音楽史に不滅の金字塔を打ち立てました。
一方で、エンディング「ルパン三世 愛のテーマ」は、ロマンチックで美しいバラード。アクションの興奮を優しくクールダウンさせ、普段は見せないルパンの人間的な側面、特に峰不二子との複雑な関係性に光を当て、物語にエモーショナルな深みを与えました。
ルパン三世アニメ50周年MAD【ルパン三世のテーマ79】
【深掘り】もう一つの名曲「ルパン三世のテーマ (歌詞付き)」
インスト版と並行して、作詞家・奈良橋陽子さんの英語詞を、歌手ピート・マック・ジュニアさんが歌うボーカル版「ルパン三世のテーマ」も制作され、多くのファンに愛されています。
「Lupin, Lupin!」という印象的なコーラスから始まるこのバージョンは、男の色気と遊び心に満ちた歌詞が魅力です。
インスト版のクールでスタイリッシュなイメージとはまた違う、より人間味あふれる情熱的なルパン像を描き出し、カラオケの定番ソングとしても親しまれるなど、「ルパンミュージック」という文化の幅広さを示す象徴的な一曲となりました。
ルパン三世アニメ化50周年MAD【ルパン三世のテーマ】ピートマックジュニア
3. 80年代の風をまとう『ルパン三世 PART3』(1984年)
1980年代の華やかな空気の中で制作された『PART3』は、音楽もその時代を色濃く反映しています。
オープニング「セクシー・アドベンチャー」は、歌手の中村裕介さんが歌う、きらびやかなシンセサイザーを大胆にフィーチャーした、明るくポップなナンバー。ピンクのジャケットを颯爽と着こなす、シリーズで最も陽気でカラフルなルパン像を象徴する一曲となりました。
そして、エンディングを飾るのが、ブラジル人歌手ソニア・ローザさんが歌う「フェアリー・ナイト」です。
この曲は、近年世界的に再評価されている日本の音楽ジャンル「シティポップ」の感覚に満ちた、非常におしゃれで幻想的な楽曲として知られています。
都会の夜景や洗練された大人の恋愛を彷彿とさせるメロウなサウンドが、80年代らしいロマンチックな夜の雰囲気を感じさせます。
【特別コラム】TVシリーズを超えて愛される、劇場版・SPの珠玉テーマ
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『ルパン三世』の音楽の魅力はTVシリーズに留まりません。
ここでは、作品の枠を超え、単独の楽曲としても愛され続ける、特に人気の高いテーマ曲を紹介します。
不朽の名作『カリオストロの城』を彩る「炎のたからもの」
宮崎駿監督作品としても知られる劇場版『ルパン三世 カリオストロの城』。
そのエンディングを飾るのが、歌手ボビーさんが歌う「炎のたからもの」です。
物語の最後、クラリスを救い出したルパンが愛車で去っていくシーンで静かに流れるこの曲は、素朴で美しいメロディと、どこまでも清らかで伸びやかな歌声が相まって、観る者の心に深い感動と温かい余韻を残します。
大野雄二さんが手掛けた、壮大でシンフォニックな劇中音楽の最後を締めくくるこの名曲は、作品の世界観と完璧に調和し、映画史に残る珠玉のテーマソングとなりました。
【ルパン三世 カリオストロの城】炎のたからもの
ハードボイルドの極致「ルパン三世ED ワルサーP38」
数あるTVスペシャルの中でも、特にシリアスでハードな作風で知られる『ルパン三世 ワルサーP38』。そのエンディングテーマは、ファンの間で根強い人気を誇るインストゥルメンタル曲です。
哀愁漂うサックスのメロディが、暗殺組織タランチュラの悲しい宿命と、ルパンが背負う過去の因縁を雄弁に物語り、作品全体をビタースイートな雰囲気で締めくくります。
この曲を聴くと、本編の重厚なシーンや登場人物たちの切ない運命が鮮やかに蘇るというファンも少なくありません。
「ルパン三世ED ワルサーP38」
4. 原点回帰と進化『ルパン三世 PART4』(2015年)
舞台をイタリアに移し、久々のTVシリーズとして制作された『PART4』。
音楽は原点回帰とも言えるジャズサウンドでありながら、現代的な解釈で見事な進化を遂げました。
オープニング「THEME FROM LUPIN III 2015」は、ファンにはお馴染みのテーマを、豪華なホーンセクションが光る、パワフルで痛快なビッグバンド・ジャズにアレンジ。そのサウンドは、ルパン三世の華麗なる復活を高らかに宣言するかのようでした。
エンディングでは、日本音楽史に残る衝撃的なコラボレーションが実現します。
演歌の女王・石川さゆりさんが、大野雄二さんのジャズと融合した「ちゃんと言わなきゃ愛さない」を熱唱。
石川さゆりさんの魂を揺さぶる「こぶし」と、複雑でスリリングなジャズ演奏が奇跡の化学反応を起こし、ジャンルの壁を越えた音楽の持つ無限の可能性を私たちに示してくれました。
5. デジタル社会を駆ける『ルパン三世 PART5』(2018年)
フランスを舞台に、インターネットや仮想通貨といった現代的なテーマに挑んだ『PART5』。
音楽もまた、モダンで先鋭的なアプローチが際立ちます。
オープニング「LUPIN TROIS 2018」は、伝統的なジャズサウンドの骨格に、シンセベースなどのエレクトロニックな要素を大胆に加え、デジタル世界をクールに駆け抜ける新しいルパン像を巧みに表現しました。
エンディングは、峰不二子役の声優・沢城みゆきさんが歌う、小粋なフレンチ・シャンソン「セーヌの風に… (Adieu)」。
アコーディオンの音色が印象的なこの曲は、物語の舞台であるフランスの情景と、不二子の持つミステリアスで切ない魅力を完璧に描き出しています。
キャラクターを演じる声優自身が歌うことで、楽曲に一層の深みと説得力が生まれています。
6. 50周年を飾るミステリー『ルパン三世 PART6』(2021年)
TVシリーズ50周年という記念すべき節目に制作された『PART6』は、ロンドンを舞台にしたミステリー作品。
音楽もまた、英国の香りを纏っています。オープニング「THEME FROM LUPIN III 2021」では、メインテーマに「スカ」のリズムを取り入れるという斬新なアレンジに挑戦。
軽快な裏打ちのリズムが、これまでにない新しいグルーヴを生み出し、音楽的挑戦を続けるシリーズの姿勢を示しました。
そしてエンディング「MILK TEA」は、ロンドン在住のシンガー、Akari Dritschlerさんを起用した、UKロック調のナンバー。
ほろ苦くもどこか温かいこの楽曲は、シリーズを通して描かれるルパンの人間ドラマに優しく寄り添い、物語に深い余韻を残しました。
2025年「ルパン三世」新作「不死身の血族」B'zの主題歌聴ける映画版
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ハードなロックサウンドと衝撃的な映像の融合
公開された映画版MVは、おなじみのルパン三世、次元大介、石川五ェ門、峰不二子、そして銭形警部の姿から始まります。
しかし、平和な時間は長くは続きません。突如の暗転とともに、B'zの稲葉浩志さんのシャウトが響き渡り、松本孝弘さんの重厚なギターリフが作品をハードな世界観へと一変させます。
映像では、ルパンの前に立ちはだかる最強の敵・ムオムが「ルパン三世、この島で人生の最期を見るがよい」と不気味に言い放つシーンや、彼に仕える謎の少女・サリファによる「あなたもこの世界に必要のないゴミみたい」といった衝撃的なセリフが登場。
息つく暇もないスリリングなアクションシーンと共に、物語の重要な鍵を握る本編映像も初解禁されており、ファンの期待を極限まで高める内容となっています。
注目すべきは「音楽の革新」― 大野雄二からジェイムス下地、そしてB'zへ
今回の劇場版で特筆すべきは、その音楽体制の革新です。
監督を務めるのは、『LUPIN THE IIIRD』シリーズでシャープかつハードなルパン像を描き、世界中のファンを魅了してきた小池健さん。
その作風に合わせるように、長年「ルパンミュージック」の魂を支えてきた作曲家・大野雄二さんに代わり、劇伴音楽をジェイムス下地さんが担当。
そして主題歌には、日本のロックを代表するB'zを起用するという、これ以上ない大胆な布陣が敷かれました。
これまでのジャズやフュージョンといったイメージとは一線を画す、B'zならではのハードで重厚なロックサウンドが、小池健監督の描く血生臭く危険なルパンの世界をどのように彩るのか。
これは本作最大の注目ポイントと言えるでしょう。
公開情報
映画の公開に先駆け、前日譚となるアニメ『LUPIN THE IIIRD 銭形と2人のルパン』が6月20日より配信開始されています。映画本編をより深く楽しむためにも、見逃せない作品です。
■ 劇場版アニメーション『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』
- 公開日: 2025年6月27日
約30年ぶりとなる2Dでの劇場公開、そしてB'zという最強の音楽パートナーを得て、『ルパン三世』がまた新たな伝説を創り上げます。
【MV】B'z「The IIIRD Eye」Ver.『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』【6月27日(金) ROADSHOW】ルパン三世
まとめ:なぜ私たちは「ルパンミュージック」に魅了され続けるのか?
50年以上にわたり、『ルパン三世』の音楽は常に私たちの心を掴んで離しません。
その最大の理由は、シリーズの根底に流れる、大野雄二さんによって確立された「カッコよさ」と「哀愁」という普遍的なDNAにあるでしょう。
その上で、各時代の最新の音楽トレンドを柔軟に取り入れ、ジャズ、ロック、シティポップ、演歌、エレクトロニカと、常に新しい挑戦を恐れない革新的な精神が、ルパンミュージックをいつまでも色褪せないものにしているのです。
数々の名曲たちが彩ってきた、ルパン三世の壮大な音楽の旅。あなたの心に最も深く刻まれている「最高のルパンソング」は、一体どの曲ですか?