デス・イーターとは?ヴォルデモートに忠誠を誓った闇の魔法使い集団
ハリー・ポッターシリーズに登場する「デス・イーター」とは、史上最も危険とされた闇の魔法使い、ヴォルデモート卿に忠誠を誓った信奉者たちの集団です。日本語では「死喰い人(しくいびと)」とも呼ばれます。
彼らはヴォルデモート卿の掲げる過激な思想に共感し、その目的を遂行するためにはスパイ活動や暗殺、民間人を巻き込む無差別テロ、そして拷問といった非道な行為もためらいません。
全員が黒いローブと、個々人でデザインの異なる不気味な仮面で正体を隠しており、その姿は魔法界全体に計り知れない恐怖と混乱を広げた存在として、物語の最後まで暗い影を落とし続けました。
名前の意味は「死を喰らう者」
デス・イーターという名前は、英語の「Death Eater」を直訳したものです。
この名前の正確な由来は公式には明かされていませんが、主君であるヴォルデモート卿自身が「死」を異常なまでに恐れ、分霊箱(ホークラックス)を作成するなど、あらゆる手段を用いて死を克服し、永遠の命を手に入れようとしていたことと深く関係していると考えられます。
つまり、「死」という根源的な恐怖すらも喰らい、超越する者たちであるという、彼らの恐ろしくもおごり高ぶった思想が、その名前に色濃く込められているのです。
純血の魔法族が世界を支配するという過激な思想
デス・イーターたちが掲げる中心的な思想は、「純血主義」と呼ばれる差別的なイデオロギーです。
これは、先祖代々魔法族の血筋であり、マグル(魔法族ではない人間)の血が一切混じっていない「純血」の魔法使いこそが最も優れており、マグルはもちろん、マグル生まれの魔法使いや、血筋にマグルが含まれる「半純血」の者たちを支配し、最終的には魔法界から排除するべきだという極めて過激な考え方です。彼らはこの思想に基づき、マグル生まれの魔法使いを「穢れた血」と蔑み、魔法省を乗っ取った際には「マグル生まれ登録委員会」を設置して迫害しました。
しかし、最も皮肉なことに、この思想を掲げるリーダーのヴォルデモート卿自身がマグルの父親を持つ「半純血」であり、またスネイプをはじめとする有力メンバーにも半純血が含まれていたという事実は、組織の矛盾を象徴しています。
主な活動内容と恐ろしい魔法
デス・イーターの主な活動内容は、ヴォルデモート卿の命令を遂行するためのあらゆる闇の魔術の行使です。
敵対する不死鳥の騎士団のメンバーや魔法省の役人を容赦なく殺害し、情報を引き出すためには拷問も平然と行います。
特に、魔法界で使用が固く禁じられている3つの「許されざる呪文」を多用することで知られています。
相手を緑の閃光と共に即座に死に至らしめる「アバダ・ケダブラ(死の呪い)」、ナイフで全身を切り刻まれるような耐え難い苦痛を与える「クルーシオ(磔の呪文)」、そして相手の精神を完全に支配し意のままに操る「インペリオ(服従の呪文)」を躊躇なく使いこなし、魔法界の人々を恐怖のどん底に陥れました。
これらの呪文は、使い手に相当な魔力と邪悪な意志がなければ効果を発揮しないため、彼らが極めて危険な闇の魔法使いであることを証明しています。
デス・イーターの主要メンバーは誰?有名なキャラクター一覧
デス・イーターには、ヴォルデモート卿の思想に心酔する狂信的な者から、一族の利益のために加担する者、そして恐怖心からやむを得ず従う者まで、様々な背景を持つメンバーが所属していました。
中でも物語に深く関わる主要なキャラクターたちがいます。
【最恐の腹心】ベラトリックス・レストレンジ
純血の名門ブラック家の出身であるベラトリックス・レストレンジは、デス・イーターの中でも最も残忍で、ヴォルデモート卿への忠誠心が異常なまでに強い狂信的な魔女です。
彼女はヴォルデモート卿を「我が君」と呼び、彼のためならどんな残虐な行為も喜び勇んで行います。
第一次魔法戦争後、多くのデス・イーターが保身に走る中、彼女は主君の行方を追い続けた罪でアズカバンに投獄されましたが、脱獄後はさらにその凶暴性を増しました。
ハリーの親友であるネビル・ロングボトムの両親を「磔の呪文」で廃人に追い込んだ張本人であり、ハリーの名付け親であるシリウス・ブラックや屋敷しもべ妖精のドビーなど、数々の重要人物をその手にかけた、まさに最恐の腹心です。
【マルフォイ家の当主】ルシウス・マルフォイ
純血の名家マルフォイ家の当主、ルシウス・マルフォイもまた、魔法界に大きな影響力を持つデス・イーターの一員でした。
彼は魔法省にも強いコネクションを持ち、その社会的地位と莫大な財力を利用してヴォルデモート卿に貢献しました。
しかし、彼の忠誠心はベラトリックスのような純粋な心酔というよりも、一族の利益や純血主義思想の実現という政治的な動機からくるものでした。
『秘密の部屋』でヴォルデモートの分霊箱とは知らずにトム・リドルの日記をジニー・ウィーズリーに渡したことや、『不死鳥の騎士団』で予言の奪取に失敗したことなど、度重なる失態によってヴォルデモート卿の信頼を完全に失い、一族の立場は大きく揺らいでいきます。
【二重スパイ】セブルス・スネイプの謎に満ちた立場
ホグワーツ魔法魔術学校の魔法薬学教授であるセブルス・スネイプは、物語全体を通して最も複雑で謎に満ちた人物です。
彼は元々デス・イーターでしたが、学生時代から密かに愛し続けていた女性、リリー・ポッター(ハリーの母親)の命が、自身がヴォルデモートに伝えた予言によって脅かされたことをきっかけに、アルバス・ダンブルドア側に寝返りました。
その後、ヴォルデモート卿の組織に再び潜入し、相手の心を読む「開心術」から自らの心を守る「閉心術」を駆使して、命がけで情報をダンブルドアに流し続ける「二重スパイ」としての極めて危険な役割を、その最期まで演じきりました。
【息子】ドラコ・マルフォイは本当にデス・イーターだったのか?
ルシウスの一人息子であるドラコ・マルフォイは、父ルシウスが神秘部の戦いで犯した失態を償わせるための見せしめとして、16歳という若さでデス・イーターになることを強要されました。
彼の左腕には他のメンバーと同様に「闇の印」が刻まれましたが、その心は両親から教え込まれた純血主義の思想に染まりつつも、殺人という行為には強い恐怖と抵抗を感じていました。
ヴォルデモートからアルバス・ダンブルドアを殺害するという過酷な任務を与えられたものの、土壇場で実行に移すことができず、マルフォイの館で捕らえられたハリーたちを咄嗟に庇うなど、彼の内面の葛藤と人間らしさが物語の重要な局面で描かれました。
その他に知っておくべき主要メンバー
他にも、ヴォルデモート卿の復活を忠実に画策し実行したバーテミウス・クラウチ・ジュニアや、かつての友人たちを裏切り、恐怖心からデス・イーターとなったピーター・ペティグリューがいます。
また、第一次魔法戦争からの古参メンバーで高い戦闘能力を持つアントニン・ドロホフ、魔法省の役人でありながら闇のスパイであったコーバン・ヤックスリー、ホグワーツを支配した残忍な兄妹アミカス・カローとアレクト・カロー、そして子供を好んで襲う凶悪な狼人間フェンリール・グレイバックのように、正式なメンバーではないものの、彼らに協力する闇の生物も存在しました。
デス・イーターの象徴「闇の印」とはどんなもの?
デス・イーターを象徴するものとして、「闇の印(ダーク・マーク)」が挙げられます。
これは単なるシンボルではなく、ヴォルデモート卿が編み出した強力な闇の魔法がかけられた、恐ろしいコミュニケーションツールであり、恐怖の刻印です。
左腕に刻まれた「骸骨と蛇」の印が持つ意味
「闇の印」は、髑髏(どくろ)の口から、ヴォルデモート卿がスリザリン寮の継承者であることを示す蛇が這い出している不気味なデザインをしています。
この印は、ヴォルデモート卿が中核メンバーとして認めた者の左の前腕に、焼き印のように刻まれます。
これは彼らがヴォルデモート卿の配下であることを示す消えることのない証であり、組織への絶対的な忠誠を生涯にわたって誓わされたことを意味します。
この印はヴォルデモートの生命力と連動しており、彼が力を失うと薄れ、力が蘇ると再び色濃く浮かび上がりました。
仲間を召喚する合図としての機能
この「闇の印」は、単なる入れ墨ではありません。
ヴォルデモート卿が誰か一人の印に触れると、すべてのデス・イーターの腕にある印が黒く変色して焼けつくような熱を発し、主君からの召集がかかったことを知らせます。
この合図は絶対であり、受け取った者は、いかなる状況であっても即座に服従し、ヴォルデモート卿のもとへ姿を現さなければなりません。
逆に、デス・イーターが自身の印に杖で触れることで、ヴォルデモート卿に合図を送り、助けを求めたり情報を伝えたりすることも可能でした。
空に浮かび上がる恐怖のシンボル
「闇の印」は、もう一つの恐ろしい使われ方をします。
デス・イーターたちは「モースモードル(闇の印よ)」という呪文を唱えることで、巨大な闇の印を夜空に花火のように打ち上げることができます。
これは主に、彼らが殺人を犯した現場や襲撃した場所に、自分たちの犯行声明として残す見せしめのサインでした。
クィディッチ・ワールドカップの襲撃事件で空に浮かんだこの印は、平和な時代が終わったことを魔法界に知らしめました。
夜空に不気味に浮かび上がる緑色の髑髏と蛇は、ヴォルデモート卿の復活とデス・イーターの脅威を魔法界全体に示し、人々に計り知れない恐怖と絶望を与えたのです。
デス・イーターの結末は?誕生から崩壊までの歴史
デス・イーターの活動は、魔法界の歴史における暗黒時代そのものであり、二つの大きな戦争、すなわち「第一次魔法戦争」と「第二次魔法戦争」に分けられます。彼らの誕生から最終的な崩壊までの歴史をたどります。
第一次魔法戦争での台頭とヴォルデモート卿の失墜
デス・イーターが初めて魔法界を恐怖に陥れたのは、1970年代に始まり約11年間にわたって続いた「第一次魔法戦争」の時代です。
トム・リドルがヴォルデモート卿と名乗り始めてから徐々に勢力を拡大し、ヴォルデモート卿の指揮のもと、彼らは魔法省の役人や、彼らに対抗するために組織された「不死鳥の騎士団」のメンバーを次々と殺害し、魔法界を支配寸前にまで追い込みました。
しかし1981年、ヴォルデモート卿が赤ん坊のハリー・ポッター殺害に失敗し、自らの呪いが跳ね返って力を失ったことで組織は一度崩壊します。
指導者を失ったメンバーの多くは逮捕を恐れて身を隠し、あるいは「服従の呪文で操られていた」と嘘をついてアズカバン行きを逃れました。
第二次魔法戦争での復活と勢力拡大
十数年の雌伏の時を経て、1995年にヴォルデモート卿がハリー・ポッターの血を使って完全に肉体を取り戻したことで、「第二次魔法戦争」が勃発します。
彼はまず、アズカバンに収監されていたベラトリックス・レストレンジなど、かつての忠実な仲間たちを集団で脱獄させ、デス・イーターを再結集させました。
今度はより巧みに魔法省の内部にまでスパイを送り込んで侵入し、1997年についには魔法大臣を殺害して魔法省を乗っ取ることに成功します。
これにより、魔法界は公式にデス・イーターの支配下に置かれ、純血主義に基づいたマグル生まれへの弾圧など、本格的な恐怖政治が始まりました。
ホグワーツの戦いでの敗北と組織の崩壊
デス・イーターの支配は、1998年5月2日に勃発した「ホグワーツの戦い」で終焉を迎えます。
ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団、そしてダンブルドア軍団を中心としたホグワーツの生徒や教師たちが、ヴォルデモート卿とデス・イーター軍団を相手に決死の抵抗を試みました。
この激しい戦いの末、最後の分霊箱であった蛇のナギニがネビル・ロングボトムによって倒され、そしてヴォルデモート卿自身がハリー・ポッターとの決闘に敗れて消滅すると、組織は絶対的な指導者を失い完全に崩壊しました。
主君の死を目の当たりにしたデス・イーターたちは蜘蛛の子を散らすように逃げ出すか、戦意を喪失して降伏し、多くが捕らえられました。
生き残ったメンバーたちのその後
戦いの後、生き残ったデス・イーターたちの運命は様々でした。
ベラトリックス・レストレンジのように戦いの中で命を落とした者もいれば、最後まで戦い抜いて捕らえられ、その罪の重さに応じてアズカバンに送られた者も多数います。
一方で、マルフォイ家のように、最終決戦の土壇場で息子を案じる親心からヴォルデモート卿を裏切る形となり、ハリーの証言もあって結果的に投獄を免れた家族もいました。
こうして、魔法界を二度にわたって脅かした闇の組織は、その指導者の死と共に、完全にその歴史の幕を閉じたのです。
デス・イーターに関するQ&A|よくある質問
ここでは、デス・イーターに関して多くの人が抱くであろう疑問について、さらに詳しく、そして分かりやすくお答えします。
デス・イーターになるための条件は?
デス・イーターになるための明確な試験や公式な入団条件は存在しません。
最も重要なのは、ヴォルデモート卿の掲げる純血主義の思想に心から賛同し、彼個人に絶対的な忠誠を誓うことです。
メンバーの多くは、純血の家系が多く集まるホグワーツのスリザリン寮出身者で構成されていますが、スネイプのような半純血や、グリフィンドール寮出身のピーター・ペティグリューも例外的に存在しました。
最終的には、ヴォルデモート卿自身がその人物の能力や忠誠心を認め、「闇の印」を左腕に授けることで、正式なメンバーとなります。
一度この印を刻まれたら、自らの意志で組織を抜けることは許されず、裏切りは死を意味しました。
なぜスネイプはデス・イーターを裏切った?
セブルス・スネイプがデス・イーターを裏切った直接的な理由は、彼が生涯で唯一愛した女性、リリー・ポッター(ハリーの母)の命が、ヴォルデモート卿によって脅かされたためです。
スネイプは、ハリーの両親を破滅に導く予言の一部を盗み聞きし、それをヴォルデモートに報告してしまいました。
しかし、その予言がリリーに向けられたものだと知った彼は激しく後悔し、彼女の命だけは助けてほしいとヴォルデモートに懇願しますが、聞き入れられませんでした。
絶望したスネイプは、最後の望みをかけてかつての恩師であるアルバス・ダンブルドアに助けを求め、リリーを守ることを条件に、ヴォルデモートを倒すための二重スパイとして働くことを決意したのです。
アズカバンに収監された主なメンバーは誰?
第一次魔法戦争がヴォルデモートの失墜によって終結した後には、ベラトリックス・レストレンジとその夫ロドルファス、義弟のラバスタン・レストレンジ、そしてバーテミウス・クラウチ・ジュニアなどが、主君の行方を追ってネビル・ロングボトムの両親を拷問した罪で捕らえられ、終身刑でアズカバンに収監されました。
第二次魔法戦争の終結後には、ルシウス・マルフォイのように司法取引やハリーの証言によって投獄を免れた者もいましたが、アントニン・ドロホフやコーバン・ヤックスリー、ワルデン・マクネアといった、最後までヴォルデモートと共に戦ったデス・イーターの多くが捕らえられ、アズカバンへと送られました。