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歴代「銭形平次」俳優名鑑|初代・長谷川一夫から大川橋蔵、北大路欣也までシリーズの歴史と魅力を徹底解説

「歴代の銭形平次」と聞いて、あなたの心に浮かぶのはどの俳優の顔でしょうか。

昭和から平成にかけて、幾度となく映像化されてきたこの不朽の名作は、時代を象徴する名優たちによって演じ継がれてきました。

その人気はテレビドラマの枠を超え、映画や舞台でも多くの人々を魅了し、日本の大衆文化における「正義の岡っ引」の象徴として、今なお色褪せることのない輝きを放っています。

この記事では、初代映画版でその礎を築いた長谷川一夫さんから、テレビで18年間、888回という金字塔を打ち立てた大川橋蔵さん、そして平成の時代に新たな平次像を築いた北大路欣也さんまで、歴代の銭形平次を演じた俳優たちを網羅的にご紹介します。

さらに、それぞれのシリーズが持つ独自の特徴や、物語に彩りを添える妻「お静」や子分「八ごろう」といった名脇役との心温まる交流、そして平次の代名詞である「投げ銭」の秘密に至るまで、あらゆる角度からその魅力を深く、そして詳細に掘り下げていきます。

この記事を読めば、あなたが知りたい「銭形平次」のすべてがわかり、その奥深い世界の虜になることでしょう。

 

目次

まずは一覧で早わかり!歴代の銭形平次役を演じた全俳優

長きにわたり多くのファンに愛されてきた「銭形平次」は、テレビドラマ、映画、舞台と様々なメディアで作品が作られてきました。

それぞれのメディアが持つ特性を活かしながら、時代を代表する俳優たちが主人公・銭形平次を演じてきました。

ここでは、その輝かしい歴史を彩った歴代の俳優たちを媒体別にご紹介します。

 

【テレビドラマ】最も作品数の多い歴代俳優陣

テレビドラマにおける銭形平次は、数々の名優によってその魂を吹き込まれてきました。

記録に残る最初のテレビシリーズは、1958年からKRテレビ(現・TBS)で放送された若山富三郎さん主演の『銭形平次捕物控』です。

その後、同じくTBSで安井昌二さんが主演を務め、お茶の間に岡っ引ヒーローの存在を浸透させました。

そして、テレビシリーズの歴史において最も象徴的な存在が、1966年からフジテレビ系列で放送され、888話という驚異的な記録を打ち立てた大川橋蔵さんです。

大川橋蔵さんのシリーズが終わりを迎えた後も、日本テレビ系列で風間杜夫さん、再びフジテレビ系列で北大路欣也さん、そしてテレビ朝日系列で村上弘明さんと、実力派俳優たちがそれぞれの時代の空気感を反映させた「銭形平次」を創り上げてきました。

 

【映画】スクリーンを彩った歴代俳優陣

「銭形平次」が初めて大衆の前に姿を現したのは、1931年の映画『銭形平次捕物控 振袖源太』でした。

この記念すべき第一作で平次役を演じたのは堀正夫さんです。

その後、戦前から戦後にかけて、嵐寛寿郎さん、小金井勝さん、海江田譲二さん、川浪良太郎さんといった銀幕のスターたちが、次々とスクリーンで十手を振るいました。

中でも、戦後の映画界で「銭形平次」のイメージを決定的なものにしたのが、大映の看板スターであった長谷川一夫さんです。

そのほか、大谷友右衛門さんや里見浩太郎さんも映画で平次役を演じており、テレビ版で絶大な人気を博した大川橋蔵さんも、1967年に映画で主演を務めています。

 

【舞台】劇場で活躍した歴代俳優陣

「銭形平次」は映像作品だけでなく、人々の目の前で繰り広げられる舞台演劇としても、長年にわたり上演されてきました。

特に、テレビや映画で平次を演じた俳優が、座長として全国の劇場で公演を行うことは珍しくありませんでした。

ファンにとっては、生の舞台で見る平次の迫力ある立ち回りや、息遣いまで感じられる緊張感、そして観客との一体感が大きな楽しみの一つでした。

映像作品とはまた違った、ライブならではの魅力が、舞台版「銭形平次」にはあふれていました。

 

あなたが一番見たいのは誰?主要な歴代銭形平次の詳細プロフィールと比較

数々の俳優が演じてきた銭形平次ですが、中でも特に知名度が高く、シリーズの顔として多くの人々の記憶に刻まれている主要な俳優たちがいます。

ここでは、それぞれの俳優がどのように役と向き合い、どんな魅力的な平次像を創り上げたのか、その特徴をより詳しく解説します。

 

【初代】長谷川一夫:全ての始まりとなった映画版の平次

 

画像引用:Amazon.co.jp

 

映画における「銭形平次」のイメージを決定づけ、その後の作品に多大な影響を与えたのが、昭和を代表する名優・長谷川一夫さんです。

長谷川一夫さんは、その徹底した役作りで知られ、歩く時の短い十手、抜くカットで使う見栄えのする長い十手、そしてアップの時に使う本物の刃がついた十手と、実に3本を使い分けるほどのこだわりを持っていました。また、平次の代名詞である投げ銭のフォームは、当時巨人のエースとして活躍していたプロ野球の名投手・別所毅彦さんの投げ方を徹底的に研究して完成させました。

その立ち回りは、殺陣としての荒々しさよりも、舞のような美しさを極め、特に投げ銭のシーンで見せる鋭い眼光と内に秘めた殺気は、観る者を圧倒するほどの迫力がありました。

 

【最も有名】大川橋蔵:テレビシリーズ最多888回主演の平次

画像引用:Amazon.co.jp

 

「銭形平次といえばこの人」と、世代を超えて多くの人が思い浮かべるのが大川橋蔵さんでしょう。

1966年から18年間にわたり、全888話のテレビシリーズで主演を務め、この「同一俳優によるテレビドラマの最多主演記録」はギネス世界記録にも認定されています。

大川橋蔵さんが演じる平次は、悪を憎む正義感が強いだけでなく、市井の人々の喜びや悲しみに心から寄り添う優しさと人情味にあふれていました。

この人間的な魅力が、お茶の間の絶大な支持を集め、時代劇の枠を超えた国民的ヒーロー像を築き上げたのです。

その卓越した演技の基礎には、映画版のスターである長谷川一夫さんから、投げ銭の技術をはじめとする平次役のノウハウを直接指導された経験が生かされています。

 

【2代目テレビシリーズ】風間杜夫:新たな魅力を開拓した平次

画像引用:Amazon.co.jp

 

大川橋蔵さんの国民的シリーズが惜しまれつつ終了した後、1987年に日本テレビ系列で新たな「銭形平次」がスタートしました。

このシリーズで主役に抜擢されたのが、当時、映画『蒲田行進曲』などで人気を博していた風間杜夫さんです。

風間杜夫さんが演じた平次は、これまでの明朗快活な英雄的イメージに加え、事件の裏にある人間の悲しさや社会の矛盾に苦悩する、より人間的な弱さや葛藤も描かれ、新たな魅力を開拓しました。

妻のお静役を宮崎美子さんが務め、脇を固める俳優陣も一新されたこのシリーズは、昭和の終わりという時代を背景に、新しい時代の「銭形平次」として視聴者に新鮮な印象を与えました。

 

【平成の銭形平次】北大路欣也:ベテランの風格漂う平次

画像引用:時代劇専門チャンネル

 

時代が平成に移り、1991年から再びフジテレビ系列で放送されたシリーズで主演を務めたのが、日本を代表する俳優の一人である北大路欣也さんです。

北大路欣也さんの持つ重厚な存在感と、長年のキャリアに裏打ちされた確かな演技力は、ベテランの風格漂う、威厳と深みを兼ね備えた平次像を創り出しました。

このシリーズは、悪を裁く勧善懲悪の爽快さに加え、事件の裏にある複雑な人間ドラマを丁寧に、そして深く描いた点が特徴です。

大人の視聴者にも十分に見ごたえのある骨太な時代劇として高く評価され、平成の「銭形平次」のスタンダードを確立しました。

 

結局、歴代で一番有名な銭形平次は誰?世間のイメージと評価を調査

時代ごとに様々な名優が演じてきた銭形平次ですが、世間一般では誰のイメージが最も強いのでしょうか。

ここでは、その知名度や評価について、様々な角度から探っていきます。

 

「銭形平次といえば大川橋蔵」が圧倒的多数!その理由とは?

やはり、「銭形平次」と聞いて最も多くの人が連想するのは、圧倒的に大川橋蔵さんです。

その最大の理由は、18年間、全888話という放送期間と話数の圧倒的な長さにあります。

毎週水曜の夜8時、お茶の間に登場する親しみやすいヒーローとして、大川橋蔵さんの姿は一つの生活習慣のように視聴者の記憶に深く刻み込まれました。また、舟木一夫さんが歌った主題歌の大ヒットも、その人気を不動のものにしました。

大川橋蔵さんが体現した、庶民的で温かい人柄と、悪を許さない強い正義感を両立させたキャラクター像が、時代を超えて愛される「理想の平次像」として定着したことも大きな要因です。

 

世代別で比較!あなたが思い浮かべる「私の銭形平次」は?

一方で、どの俳優の平次を思い浮かべるかは、その人の生きた時代や年齢によっても大きく異なります。

昭和の時代にテレビに親しんだ世代にとっては、大川橋蔵さんが誰にとっても不動の存在でしょう。

しかし、平成生まれの世代や、時代劇専門チャンネルなどで後追いで作品に触れた人たちにとっては、北大路欣也さんの知的で重厚な平次が最も印象に残っているかもしれません。

さらに、映画ファンや時代劇の研究家であれば、全ての礎を築いた長谷川一夫さんの名前を真っ先に挙げることでしょう。

このように、それぞれの世代に、それぞれの原体験としての「私の銭形平次」が存在するのです。

 

各俳優の演技スタイルの違いを徹底比較

歴代の平次役を演じた俳優たちの演技スタイルを比較すると、その個性とアプローチの違いは明確です。

長谷川一夫さんは、歌舞伎役者出身ならではの所作の美しさを活かし、様式美を追求した「粋」で洗練された平次を演じました。

対照的に、大川橋蔵さんは、その柔和な笑顔と親しみやすさを前面に出し、誰もが応援したくなるような「庶民派」のヒーロー像を確立しました。

そして、北大路欣也さんは、事件の背景にある人間の業や社会の矛盾にまで深く踏み込むような、シリアスで「重厚」な演技で物語に圧倒的な深みを与えました。

 

歴代の銭形平次シリーズはどこで見れる?動画配信サービス情報まとめ

「あの懐かしい名作をもう一度見たい」「初めてだけど、どのシリーズから見ればいいの?」という方のために、現在「銭形平次」シリーズを視聴できる主な方法をご紹介します。

 

大川橋蔵版『銭形平次』を視聴できるサービス

最も話数の多い大川橋蔵さん主演シリーズは、現代においては動画配信サービスで視聴するのが最も手軽な方法です。

YouTubeの公式チャンネル「東映時代劇チャンネル」では、定期的に様々なエピソードが期間限定で無料配信されており、気軽に名作に触れることができます。また、より多くの話数をじっくりと楽しみたい場合は、Amazon Prime Videoの有料チャンネル「東映オンデマンド」への加入がおすすめです。

見放題で数百話単位のエピソードが提供されており、思う存分その世界に浸ることができます。

このほか、BSやCSの時代劇専門チャンネルで特集が組まれ、再放送されることもあります。

 

北大路欣也版『銭形平次』を視聴できるサービス

北大路欣也さん主演の平成シリーズも、動画配信サービスや専門チャンネルでの視聴が中心となります。

配信状況は時期によって変動するため一概には言えませんが、各動画配信サービスのラインナップを定期的に確認したり、BS12 トゥエルビといった無料BSチャンネルの番組表や公式サイトで再放送情報をチェックしたりすることで、視聴の機会を見つけることができます。

 

過去作はDVDやBlu-rayでレンタル・購入できる?

残念ながら、「銭形平次」シリーズ、特に全888話に及ぶ大川橋蔵さん主演版は、全話を収録したDVD-BOXやBlu-ray BOXなどは現在発売されていません。

過去に一部の人気エピソードがビデオテープで発売されたり、1967年公開の映画版がDVDで発売されたりしたことはありますが、全シリーズを物理メディアで揃えることは極めて困難な状況です。

そのため、視聴するには動画配信サービスやテレビでの再放送に頼るのが、最も現実的な方法となります。

 

【基本情報】そもそも「銭形平次」ってどんなキャラクター?

長年愛されてきた「銭形平次」ですが、その基本的なキャラクター設定や物語の魅力的な背景について、原作者・野村胡堂さんの小説をもとに、改めておさらいしてみましょう。

 

岡っ引「銭形平次」の人物像と決め台詞

銭形平次は、江戸・神田明神下に住む腕利きの「岡っ引」です。

岡っ引とは、町奉行所の同心や与力といった役人に私的に協力し、犯罪捜査や犯人逮捕にあたった、いわば非公式の捜査員のことです。

原作小説によると、平次は31歳、彼の活躍を支える恋女房のお静は23歳、そして子分の八五郎(通称ガラッ八)は30歳という、意外にも若い設定でした。

平次には特定の決め台詞はありませんが、彼の代名詞となっているのは、悪人に対して寛永通宝を投げつけるその鮮やかな姿そのものです。

 

物語の舞台は江戸の町「神田明神下」

物語の主な舞台は、江戸の活気あふれる庶民が暮らす町、神田明神下です。

平次の住まいは、六畳ふた間に台所という質素な長屋と描写されていますが、その家には磨きこまれた長火鉢があり、濡れ縁には万年青(おもと)の鉢が置かれているなど、丁寧な暮らしぶりがうかがえます。

こうした庶民の生活空間で事件が起こり、平次が町の人々と心を通わせながら謎を解いていくという設定が、物語に温かみとリアリティを与えています。

 

必殺技「投げ銭」は本当に使われていた?

平次の象徴ともいえる必殺技「投げ銭」は、史実ではなく、作者である野村胡堂さんの豊かな創作力から生まれたものです。

野村胡堂さん自身は、中国の伝奇小説『水滸伝』に登場する、石を投げる礫(つぶて)投げの名手「没羽箭張青(ぼつうせんちょうせい)」から着想を得たと語っています。

一方で、時代劇研究家の名和弓雄さんは、江戸時代に庶民の間で流行していた、柱の釘に銭の穴を掛ける「投げ銭遊び」を野村胡堂さんが知っていて、それをヒントにしたのではないか、という興味深い説を提唱しています。

いずれにせよ、この独創的な必殺技が、銭形平次を唯一無二のヒーローにしたことは間違いありません。

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