画像引用:東映ビデオ株式会社
テレビ時代劇の金字塔として、今なお多くのファンに愛され続ける「遠山の金さん」。
普段は遊び人の「金さん」として江戸の町に溶け込み、いざとなれば桜吹雪の入れ墨を見せて悪を裁く北町奉行・遠山金四郎景元の姿は、多くの視聴者を魅了してきました。
この物語の魅力は、勧善懲悪の痛快なストーリー展開はもちろんのこと、主役の金さんを演じた歴代の名優たちの個性豊かな演技にあります。
この記事では、「遠山の金さん 歴代」というキーワードで検索されている方々の疑問にすべてお答えするべく、初代から続く歴代の主演俳優から、気になる人気ランキング、物語を彩った女優陣、そしてシリーズの歴史まで、データベースに基づいて徹底的に解説していきます。
遠山の金さん歴代俳優一覧!初代から松平健まで7人を一挙紹介
「遠山の金さん」シリーズは、昭和45年(1970年)にテレビ朝日系で放送が始まって以来、37年間にわたって計7作、総話数804話にも及ぶ壮大な物語が放送されました。
この804話という話数は、日本のテレビドラマ史においても特筆すべき記録であり、いかに本シリーズが長きにわたって視聴者に愛され続けてきたかを物語っています。
この長大な歴史の中で、遠山金四郎景元という一人のヒーローを、それぞれが時代を代表する個性豊かな7人の時代劇スターが演じてきました。
同じ主人公でありながら、演じる俳優によって全く異なる魅力が引き出されたことから、「七人七様の金さん」とも呼ばれ、シリーズがマンネリ化することなく人気を保ち続ける大きな要因となりました。
ここでは、歌謡役者、歌手、映画スターといった様々な背景を持つ歴代の金さんを演じた俳優たちを、それぞれのシリーズが持つ独特の魅力とともに、詳しくご紹介していきます。
初代:中村梅之助さん
画像引用:東映ビデオ株式会社
記念すべき初代・遠山の金さんを演じたのは、劇団前進座の看板俳優であった中村梅之助さんです。
1970年(昭和45年)から約3年間にわたり全169話が放送されたシリーズ第1作目「遠山の金さん捕物帳」で、見事に主役を務め上げました。
当時40歳だった中村梅之助さんにとって、本作がテレビ時代劇で初めての主演作品でした。
その出演の背景には、父であり同じく名優の三代目中村翫右衛門さんからの強い後押しがあったといいます。
「歌謡という舞台の世界からテレビに出ることで、より多くの家庭に入り、大衆的な親しみを持ってもらうことが大切だ」という父の狙いは見事に的中しました。
歌舞伎の世界で培われた確かな演技力と、人間味あふれる庶民的で親しみやすいキャラクター像を見事に両立させ、中村梅之助さんが演じる金さんは、すぐさまお茶の間のヒーローとして絶大な人気を獲得しました。
その役作りへの情熱は凄まじく、金さんの象徴である桜吹雪の入れ墨を目立たせるには肌の白さが重要だと考え、出演していた4年間、日に当たらないよう日陰ばかりを歩いていたと語っています。
スタッフ4、5人がかりで4時間近くもかかったという入れ墨の化粧を施し、まさに身も心も金さんになりきっていました。
中村梅之助さんの金さんは、その後のシリーズの揺ぎない礎を築き、テレビ時代劇史に燦然と輝く、まさに伝説の始まりと言えるでしょう。
2代目:市川段四郎さん
画像引用:【東映時代劇YouTube】
1973年から約1年間放送されたシリーズ第2作目「ご存知遠山の金さん」(全51話)で2代目を務めたのが、初代と同じく歌舞伎役者の市川段四郎さんです。
絶大な人気を博した前作からのバトンタッチは大きなプレッシャーがあったと想像されますが、市川段四郎さんはその重責を見事に果たしました。
前作の好評を受け、主題歌は中村梅之助さん版と同じく親分&子分ズの『遠山の金さん』が引き続き使用され、シリーズとしての継続性を視聴者に示しました。
市川段四郎さんが演じた金さんの最大の特徴は、その所作の美しさと、内面から滲み出る「品格」にあります。
中村梅之助さんの金さんが人情味あふれる「町の人気者」であったのに対し、市川段四郎さんの金さんは、遊び人を演じていてもどこか育ちの良さを感じさせる、落ち着きと知性を備えたキャラクターとして描かれました。
歌舞伎の舞台で培われた美しい立ち居振る舞いや、明瞭で聞き取りやすいセリフ回しは、お奉行様としての威厳と説得力に繋がり、初代の持つ庶民的な魅力とはまた一味違った、品格と落ち着きのある金さん像を確立しました。
この市川段四郎さんの好演によって、「遠山の金さん」というキャラクターは、演じる役者によって異なる魅力を引き出せる懐の深いヒーローであることが証明され、その後のシリーズの多様性を生み出す上で、歴史を繋ぐ極めて重要な役割を果たしたのです。
3代目:橋幸夫さん
画像引用:ORICON NEWS
3代目の金さん役を務めたのは、「御三家」の一人として国民的な人気を博していた歌手の橋幸夫さんです。
これは、本格時代劇の主演に歌謡界の大スターを起用するという、当時としては非常にユニークなキャスティングでした。
橋幸夫さんは、その圧倒的な知名度と歌手としての魅力を存分に活かし、劇中で自慢の歌声を披露する場面が盛り込まれるなど、これまでの金さん像とは一線を画す演出が施されました。
シリーズ全体を通してコミカルな場面が意図的に多く取り入れられ、シリアスな展開の中にもユーモアが溢れる、明るく親しみやすい雰囲気が大きな特徴です。
橋幸夫さんが演じた金さんは、悪を裁く厳しい奉行という側面よりも、町民と気さくに交流する人情味あふれるヒーローとして描かれ、家族揃って楽しめる時代劇としてお茶の間に多くの笑顔を届けました。
シリーズの放送期間自体は他の俳優陣と比べて短くはありましたが、その明朗快活なキャラクターは、「遠山の金さん」の歴史において異彩を放つ、記憶に残る金さん像となりました。
4代目:杉良太郎さん
画像引用:https://jp.pinterest.com/
初代の中村梅之助さんが築いた庶民的な金さん像を引き継ぎ、1975年から2代目を務めたのが杉良太郎さんです。
杉良太郎さんは、初代とは対照的に、クールでニヒルな魅力を前面に押し出し、全く新しい金さん像を鮮烈に打ち立てました。
その最大の特徴は、お白洲で見せる様式美とも言えるアクションです。
悪党たちが白を切り続けるクライマックスで、高く足を蹴り上げてから片肌を脱ぎ、桜吹雪の入れ墨を披露する一連の動きは、キレがあり非常にスタイリッシュでした。
この斬新な演出は、当時の視聴者に強烈なインパクトを与え、杉良太郎さん演じる金さんの代詞となりました。
さらに、このシリーズの人気を決定づけたのが、杉良太郎さん自身が歌った主題歌「すきま風」です。
作詞はいではくさん、作曲は遠藤実さんが手掛けたこの曲は、物語が持つ哀愁や金さんの孤独感と見事に融合し、爆発的な大ヒットを記録。
オリコンシングルチャートの100位圏内に147週もの長期間ランクインし続けるという、歌謡史に残る社会現象を巻き起こしました。
この記録は、後に中島みゆきさんの「地上の星」によって破られるまで、歴代最長記録として君臨し続けました。
演技と歌、その両方で唯一無二の世界観を構築し、杉良太郎さんはクールなヒーローとしての金さん像を完全に確立したのです。
5代目:高橋英樹さん
画像引用:https://jp.pinterest.com/
1982年から放送されたシリーズで4代目を務めたのが、豪快な魅力で人気を博した高橋英樹さんです。
高橋英樹さんが演じた金さんは、歴代の中でも特に力強く、頼りがいのある親分肌のキャラクターとして描かれました。
その最大の見せ場の一つが、ぬれた手ぬぐいを巧みに使った独特の立ち回りです。
刀を抜かずとも、この手ぬぐい一つで悪人たちを次々となぎ倒していく姿は、金さんの圧倒的な強さと、無益な殺生を好まない懐の深さを見事に表現しており、視聴者に新鮮な驚きを与えました。
そして、クライマックスのお白洲の場面では、その迫力が頂点に達します。
悪人たちに投げかける啖呵は、まさに雷鳴のようで、その力強い声と眼光の鋭さは、悪事を暴かれた者たちが観念せざるを得ないほどの説得力を持っていました。この圧倒的な存在感が、高橋英樹さん版の金さんの大きな魅力でした。
6代目:松方弘樹さん
画像引用:https://jp.pinterest.com/
6代目として、1988年から約10年というシリーズ最長の期間にわたり金さんを演じきったのが松方弘樹さんです。
昭和の終わりから平成にかけて放送された「名奉行 遠山の金さん」シリーズで主演を務め、多くの視聴者にとって最も馴染み深い金さん像を築き上げました。
松方弘樹さんが演じた金さんの最大の魅力は、これまでの金さんとは一線を画す、円熟した大人の色気とダンディズムにありました。
ゆったりと胸をはだけさせた粋な着流しの着こなしは、遊び人としての余裕と、酸いも甘いも噛み分けた大人の男の深みを感じさせました。また、その立ち回りは、実父であり時代劇の大スターであった近衛十四郎さんを彷彿とさせるシャープで美しい剣さばきで、歴代金さん屈指と高く評価されています。
遊び人の顔と、悪を許さぬ奉行の顔、その両方に説得力を持たせた重厚な演技は、まさに松方弘樹さんならではのものでした。
さらに、松方弘樹さん自身が歌った主題歌「華のうちに」(作詞・作曲:吉幾三さん)も、シリーズの人気を支える大きな要素となりました。
哀愁漂うメロディーと、人生の機微を歌った歌詞が、松方弘樹さんが演じる金さんの人間的な魅力と完璧に調和し、多くの視聴者の心を掴みました。
この約10年という長期にわたる活躍により、松方弘樹さんはまさに平成を代表する金さんとして、その地位を不動のものにしたのです。
7代目:松平健さん
画像引用:https://jp.pinterest.com/
37年にわたるシリーズの歴史を締めくくる7代目の金さんとして、まさに「真打ち登場」と言える形でバトンを受け継いだのが、「暴れん坊将軍」の徳川吉宗役で時代劇の象徴的存在となっていた松平健さんです。
将軍様が町奉行を演じるという、この画期的なキャスティングは、放送前から大きな話題を呼びました。
松平健さんといえば、八代将軍・徳川吉宗として貧乏旗本の三男坊「徳田新之助」に身をやつし、市井(しせい)に紛れて悪を懲らしめる姿がお茶の間に深く浸透していました。
そのヒーロー像は、遊び人の金さんに身をやつして江戸の悪を斬る遠山金四郎の姿と見事に重なります。
長年「暴れん坊将軍」で培ってきた、権力者の身分を隠して庶民と交流し、悪を裁くという役どころは、まさに松平健さんの十八番(おはこ)であり、その演技には絶対的な安定感と説得力がありました。
松平健さんが演じる金さんは、これまでのどの金さんとも異なる、生まれ持った「威厳」と「風格」を漂わせていました。
遊び人を演じている時でさえ、その立ち居振る舞いには隠しきれない気品があり、お白洲で見せる奉行としての姿は、まさに将軍を彷彿とさせるほどの圧倒的な存在感を放っていました。
その重厚な演技は、シリーズの最後にふさわしい、格の違いを感じさせる金さん像を創り上げ、長年にわたる時代劇スターとしての貫禄が、「遠山の金さん」という偉大なシリーズの歴史に、荘厳で新たな1ページを刻み込んだのです。
歴代・遠山の金さん人気ランキング!一番支持された金さんは誰?
これほど多くの名優たちが演じてきた遠山の金さんだからこそ、「一体誰が一番人気だったのか?」と気になる方も多いでしょう。
ここでは、様々な角度から歴代金さんの人気について探っていきます。
視聴者の声から見る人気No.1は?口コミや評判を調査
どの時代の金さんにも熱心なファンがおり、誰が一番かを決めるのは非常に難しい問題です。
というのも、「最高の金さん」は、視聴者がどの時代にシリーズと出会ったかという「世代」によって大きく左右されるからです。
しかし、その中でも特に多くの声が挙がるのが、初代の中村梅之助さん、2代目の杉良太郎さん、そして6代目の松方弘樹さんです。
初代の中村梅之助さんを支持する声には、「やはり原点が一番」「金さんの温かい人情味は梅之助さんならでは」といった、全ての基本を作り上げたことへの尊敬の念が込められています。
中村梅之助さんが確立した「弱きを助け、強きをくじく」というヒーロー像の原型は、後続のシリーズにも脈々と受け継がれており、その功績は計り知れません。
一方、杉良太郎さんには「とにかく格好良かった」「主題歌『すきま風』と相まって、ニヒルな魅力に痺れた」といった、そのスター性を絶賛する声が多数寄せられます。
杉良太郎さんは、それまでの時代劇ヒーロー像を覆すようなクールでスタイリッシュな金さんを演じ、新たなファン層を開拓しました。
そして、最も長い期間にわたって金さんを演じた松方弘樹さんには、「物心ついた時から金さんといえば松方さんだった」「大人の色気と頼りがいが最高」といった、親しみと安定感を評価する声が多く見られます。
約10年間という長期にわたって親しまれたことで、一つの世代にとっては「金さん=松方弘樹」というイメージが完全に定着しています。
このように、それぞれの俳優が独自の魅力を最大限に発揮し、時代を象徴するヒーロー像を創り上げたからこそ、誰か一人をNo.1と定めることができない、豊かで奥深いシリーズとなっているのです。
最高視聴率で比較!最も見られたシリーズは?
全シリーズの正確な最高視聴率を現代で比較することは困難ですが、その人気を物語るエピソードは数多く残されています。
例えば、初代・中村梅之助さんのシリーズは、当時絶大な人気を誇っていたNHK大河ドラマの裏番組でありながら、庶民のヒーローとして高い支持を得ていました。また、松方弘樹さんのシリーズが約10年という長期にわたって放送されたこと自体が、安定した高い人気を維持し続けていたことの何よりの証明と言えるでしょう。
初代・中村梅之助の不動の人気とその理由
数ある金さんの中でも、初代を演じた中村梅之助さんには特別な思い入れを持つファンが少なくありません。
その理由は、中村梅之助さんがテレビにおける「遠山の金さん」のイメージをゼロから作り上げた立役者だからです。
親しみやすく、庶民の心に寄り添うヒーロー像は、多くの視聴者の心を掴みました。
歌舞伎で培われた確かな演技に裏打ちされたその存在感は、まさにシリーズの原点であり、その不動の人気はこれからも揺らぐことはないでしょう。
物語を彩った歴代の主要キャストと豪華女優陣
「遠山の金さん」シリーズの魅力は、主役の金さんだけではありません。
物語に深みと彩りを加えた、個性豊かな脇役や美しいヒロインたちの存在も忘れてはなりません。
各シリーズのヒロインは誰だった?歴代女優を一覧で紹介
シリーズを通して、時代を代表する豪華な女優陣がヒロイン役などを務め、物語に華を添えました。
例えば、高橋英樹さんのシリーズでは由紀さおりさんやかたせ梨乃さんが出演し、大きな話題を呼びました。また、長期シリーズとなった松方弘樹さんの「名奉行 遠山の金さん」では、池上季実子さんや斉藤慶子さんといった実力派女優が、金さんを支える重要な役どころを見事に演じきりました。
お白洲の名脇役!遠山の金さんを支えたキャストたち
金さんの名裁きが行われるお白洲の場面を盛り上げた、個性的な脇役たちの活躍もシリーズの大きな見どころです。
高橋英樹さんのシリーズに登場した樹木希林さんは、その独特の存在感で作品に忘れがたい印象を残しました。
松方弘樹さんのシリーズでは、若き日の東山紀之さんや柳沢慎吾さん、そしてベテランの石立鉄男さんなどが脇を固め、金さんとの軽妙なやり取りで視聴者を楽しませてくれました。
遠山の金さん歴代シリーズの視聴率と歴史を振り返る
昭和から平成にかけて、半世紀近くもお茶の間に愛され続けた「遠山の金さん」。
その輝かしい歴史と、人々を惹きつけてやまない魅力の秘密に迫ります。
最高視聴率を記録したのはどのシリーズ?
前述の通り、全シリーズの最高視聴率を単純に比較する公式なデータは残されていません。
しかし、初代の中村梅之助さん主演シリーズが強豪番組の裏でヒットを飛ばしたことや、松方弘樹さん主演シリーズが約10年も続いた事実は、いずれも社会的な人気番組であったことを示しています。
どのシリーズもそれぞれの時代で高い支持を集めていたことは間違いありません。
シリーズごとの放送期間と話数まとめ
「遠山の金さん」のテレビシリーズは、1970年に中村梅之助さん主演の「遠山の金さん捕物帳」(全169話)から始まりました。
その後、市川段四郎さん、橋幸夫さん、杉良太郎さん、高橋英樹さん(2シリーズで全198話)、松方弘樹さん(約10年間)、そして松平健さんへとバトンが受け継がれ、シリーズ累計で804話という膨大な物語が紡がれました。
遠山の金さんシリーズが半世紀近く愛される理由とは?
なぜ「遠山の金さん」はこれほど長く愛され続けているのでしょうか。
その最大の理由は、悪が裁かれ正義が勝つという「勧善懲悪」の普遍的なカタルシスにあります。
加えて、普段は気さくな遊び人でありながら、実は江戸の治安を守るお奉行様という二つの顔を持つヒーロー像は、見る者にワクワク感を与えてくれます。
そして、クライマックスでお白洲の悪人たちに桜吹雪の入れ墨を見せつけ、「この桜吹雪、見忘れたとは言わせねぇぞ!」と啖呵を切る決め台詞は、時代劇史に残る屈指の名場面です。
この痛快さに、歴代の名優たちが吹き込んだそれぞれの個性が加わることで、「遠山の金さん」は時代を超えて輝き続ける不朽の名作となったのです。